中小企業の破産・倒産
会社が債務超過となり、資金繰りに困るようになった場合、経営者としては、今後も事業を継続するかどうか、判断に悩むことがあると思います。
そのような場合、当事務所にご相談いただければ、専門的な見地から事業の継続についてアドバイスを致しますとともに、具体的なスケジュールを立てて、会社債権者から防御し、再スタートができるよう、親身になってお手伝いを致します。
しかし、会社の事業継続がもはや困難な事態と言わざるを得ない場合もあります。そのときには、会社の破産手続を裁判所に申し立てることが必要になってきます。(会社の倒産手続には民事再生手続等もありますが、破産せずにやっていけるかは、現金収入で経営を継続できるか否かにかかっています。)
会社の倒産や破産の特徴
会社の破産は、会社が債務超過の状態にあって、債権者に対して支払いを継続することが不可能なことを裁判所に申し立て、会社の保有する財産を全て換価して債権者に配当した上で、裁判所の救済により残りの借金の支払いを免れる制度です。
会社の破産の場合は、個人の破産と異なり、複雑な取引関係、財産関係が存在することが多く、多数の資料によって、それらを明らかにしなければなりません。これらは、専門家の知見に基づいて、順序よく整理、書面化し、裁判所に申し立てる必要があります。
また、金融業者からの借入ばかりでなく、取引先に対する買掛金債務が多くあることも、会社の破産の特徴です。そのような債権者からは、申立後の問い合せが殺到したり、場合によっては強引な取立に遭うことも予想されます。会社の破産の場合、そのような事態に備えて、弁護士を対応窓口として一本化し、適切な対応を取ることが肝要です。
従業員のいる会社・事業者の破産の場合には、従業員に、会社の破産や未払給料についてどう説明するかが重要になってきます。これらの説明についても弁護士を窓口として一本化して、迅速かつ適切な対応を取ることが肝要です。
会社の破産の場合、代表者個人が事業のために借入を行っていたり、会社の債務について連帯保証をしていることが多くあります。この場合には、会社だけでなく、代表者個人の債務も整理する必要がありますから、弁護士は両方の代理人となって、それぞれの手続を同時に進めていくことになります。
このように、会社の破産には、通常の個人の破産とは異なる特徴があり、事件が複雑であることも少なくありません。当事務所では、開設以来10年以上にわたって、法人・個人事業者の破産申立を数多く受任してきた実績があります。安心してお任せ下さい。
破産手続きは、裁判所の管理のもとで会社を整理する制度です
支払不能または債務超過にある債務者について、財産等の適正かつ公正な清算をはかる手続です。原則として債務者の財産等は、裁判所が任命した破産管財人により調査され、換価して配当を行います。これらの手続は複雑なケースが多いので、廃業をお考えの経営者の方は、お気軽に弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士費用について
会社の破産申立の弁護士費用については、定ったものはありません。債権額・債権者数等ご依頼の規模に応じます。詳しくは弁護士と相談することが必要です。この費用は予めお持ちの預金の中から捻出していただき、残った会社資産から債権者に分配をし、破産の手続きをすすめます。
会社の倒産や破産についてのQ&A
配偶者や子供に迷惑がかかってしまうのではありませんか。
配偶者や子供が連帯保証人になっていなければ債務が配偶者や子供にかかることはありません。
従業員への給与はどうなるのでしょうか。
従業員への給与は、債務者の総財産から優先的に弁済されます。
労働者健康福祉機構の未払賃金立替払制度がありますので、この制度を利用すると未払賃金の立替払いを受けることができますので、会社に財産が無い状態であったとしても従業員給与への配慮ができます。
※労働者健康福祉機構の未払賃金立替払制度・・・労災保険の適用事業であって、1年以上にわたって事業活動を行ってきた企業の従業員は、その企業が破産した場合において、その申立て日の6箇月前の日から2年以内に退職したときは、労働者健康福祉機構から未払賃金の立替払いを受けることができます。この制度の適用があるのは、定期賃金・退職手当の未払い賃金総額のうち、退職時の年齢に応じて110万円ないし370万円を上限として、その80%の金額とされています。ただし、総額2万円以上でないと支給されません。
支払が滞っている取引先からクレームが来たらどうしたらいいでしょうか。
債権者からの支払請求は弁護士が対応いたします。
破産するために必要なものは何でしょうか。
破産の申立てをするにあたっては、裁判所に、申立書、債権者一覧表、住民票の写し、家計表、源泉徴収票・確定申告書・給与明細書などの収入に関する資料、財産目録、(法人の場合)登記事項証明書、貸借対照表、損益計算書などを提出する必要があります。
また、これらの書類のほか、詳細は裁判所によって取り扱いは異なりますが、預金通帳、保険証券、車検証、不動産登記簿謄本などの財産に関する資料などの提出を求められるのが通常です。
さらに、これらの書類のほかに、裁判所に納める予納金、収入印紙、郵便切手等が必要となります。
裁判所に納める予納金の額は、債権者の数や負債の額によって異なりますので、あらかじめ弁護士にご相談ください。
どんなリスク(デメリット)がありますか。
【個人の場合】
破産手続は、破産する人の所有する財産を換価(お金に変えること)して、債権者に配当するという手続ですので、持っている財産は原則として換価して債権者に配当されてしまいます。ただ、生活必需品まで取り上げるという手続ではありませんので、20万円未満の財産は原則としてそのまま所有し続けることができます。
また、破産すると弁護士、公認会計士、保険外交員、警備員などの職業につけないという資格制限があります。ただし、破産手続が終了すると、復権といって破産者としての地位から回復しますので、資格の制限も受けなくなります。
さらに、ブラックリストという金融機関のつくるリストに載ってしまい、金融機関からの借入れが困難になるといったデメリットもありますが、破産しなくても、返済が滞るとブラックリストに載ってしまいますので、破産した場合に特有のリスクというわけではありません。
【法人の場合】
破産は、法人の解散事由とされていますので、破産手続が終了すると、その法人は解散して消滅してしまいます。そのため、再度、同じ法人で仕事をはじめることはできません。
同じような業種の会社を再び設立することはできますか。
可能です。
破産した会社は、破産手続が終了すると解散して消滅してしまいますが、新しい会社を設立することについて法律上は何も制限はありません。
他の会社の役員もやっているのですが、そちらはどうしたらいいでしょうか。
会社の代表者の方が、他の会社の役員にもなっている場合、破産をすると、一旦、他の会社の役員も辞めることになります。
会社と役員との関係は、委任関係とされており、役員は受任者(委任を受けた人)になりますが、委任契約は、受任者が破産すると終了すると定められていますので、役員が破産すると、会社との委任契約が終了してしまい、他の会社の役員も辞めざるを得なくなります。
ただし、再度、会社と委任契約を結ぶことについては特に規制はありませんので、再度、会社と委任契約を結んで役員になることはできます。
代表者も破産しなければいけないのでしょうか。
理論上は、会社と代表者は、別人格ですので、会社が破産するかどうかと代表者が破産するかどうかは別の問題です。
しかし、会社が、借入れや仕入れを行うに際し、代表者が保証人になっている場合は、会社が破産すると、保証人である代表者に請求がくることになります。
個人企業の場合、銀行等からの借入れに際して、代表者が保証人となっていることが通常ですが、会社が破産するおそれのある状態になっているときは、代表者も財産を有していないことが多いので、会社が破産する場合、保証人の代表者も支払うことができず、会社とともに代表者も破産することが多いようです。
破産する直前に離婚をすると疑われるでしょうか。
破産するかどうかと離婚するかどうかは全く別の話ですので、破産する直前に離婚したからといって直ちに問題となるわけではありません。
ただ、破産するおそれのある状態にある方が、離婚に伴って財産分与をした場合に、それが財産分与としては不相当に過大であり、財産分与に名を借りた財産の処分であると認められるときは、後日、その財産分与のうち不相当に過大な部分は他の債権者を害する行為であるとして取り消されるおそれがあります。
また、同様に、離婚に伴って慰謝料を支払う場合も、その人が負担すべき損害賠償債務の額を超えた金額の慰謝料を支払う旨の合意がされたときは、その超えた部分について、後日、他の債権者を害する行為であるとして取り消されるおそれがあります。
破産する予定の方が、財産分与や慰謝料の取決めをする場合には、事前に弁護士に相談した方がよいでしょう。
代表者が個人破産した場合、妻名義の口座は影響をうけますか。
代表者個人の財産と、妻の財産とは別のものですので、代表者が破産するからといって、妻に請求がきたり、妻の財産が差し押さえられたりすることはありません。
したがいまして、妻名義の口座にも影響はありません。
ただし、代表者の借入れについて、妻が保証人となっている場合には、妻は保証人として支払義務を負いますので、妻に請求がきたり、妻が支払わないと妻名義の口座が差し押さえられたりするおそれはあります。
他の会社に営業譲渡して、見込みのある事業は残して破産したいのですが、可能でしょうか。
可能です。
ただし、債権者への支払いが困難になり、既に破産のおそれがある状態になってから、財産を処分する場合、処分価格が適正でないと、債権者を害する行為であるとして、後に取り消されるおそれがあります。
営業譲渡の場合は、「適正な価格」がいくらであるかの評価が難しいため、後に問題となるおそれがありますので、事前に弁護士に相談されることをお勧めします。
なお、破産手続開始決定後は、裁判所から、破産管財人が選任され、この破産管財人が、総債権者の利益を代表して破産者の財産についての管理・処分権限を有することになりますが、破産管財人が、裁判所の許可を得て、破産会社の営業を譲渡することもできるとされています。
個人にお金を借りていた人には迷惑をかけたくないので、破産の時期をずらして、売掛金を回収し、返済してから、破産に持ち込みたいのですが、いい方法はありますか。
売掛金を回収してから破産することは問題ありませんが、他の債権者への支払いを停止している状態で、特定の債権者に対してのみ返済する行為は、偏頗弁済(へんぱべんさい)といって、後にその返済を取り消されるおそれがあります。
そのため、売掛金を回収して、その人だけに返済すると、後で問題となるおそれがあります。
破産をする前に、ノンバンクローンの人を紹介され、実際にはそれが原因で破産の時期が加速してしまったのですが、この人をなんとかすることはできないのでしょうか。
利息制限法に違反する金利で貸し付けを受けた場合であれば、出資法違反として刑罰が科されたり、行政処分が課されたりします。
銀行が追加融資をするといっていたので、全額返済をしたら、追加融資をしてもらえず、逆に資金繰りが悪化し倒産しそうです。破産以外の道はないのでしょうか。
一概に倒産といっても、とり得る手続はいくつかあります。
大きく分けると、裁判所を通す手続である法的整理と、裁判所を通さない手続である私的整理に分かれます。
私的整理は、債権者と債務者との話し合いで、借金の一部免除や分割払いの約束などをして、債務の整理を行うというものです。裁判所を通さない手続ですので、比較的、柔軟に手続を進めることができるのがメリットですが、強制執行により債権回収を図る強硬な債権者がいると、手続を進めるのが困難になるというデメリットがあります。事業再生ADRも私的整理に含まれます。
法的整理には、破産手続、民事再生手続、特別清算手続、会社更生手続がありますが、法的整理は、その目的により、清算型と再建型に分けられます。
清算型は、事業を終了して、債務者の全財産を清算するという整理方法です。
破産手続、特別清算手続がこれにあたります。破産手続は、個人、法人を問わず利用することができますが、特別清算手続は株式会社のみが利用できます。
再建型は、事業を終了するのではなく、債務の一部を免除してもらい、事業を建て直す(再建する)という整理方法です。
再建型としては、民事再生、会社更生といった手続があります。いずれの手続も、事業を継続しながら、債務の圧縮を図り、事業の収益から返済していくというものですが、民事再生手続は、個人、法人を問わず利用することができるのに対し、会社更生手続は株式会社のみが利用できます。
民事再生手続では、手続の開始後も事業の遂行及び財産の管理処分権を原則として債務者に残されるので、債務者が従来通り業務を遂行できるのに対し、会社更生手続では、必ず管財人が選任され、その管財人に債務者の事業経営権及び財産の管理処分権が移りますので、取締役が従来通り業務を遂行することはできなくなります。
弁護士に依頼するメリット
○法人の破産手続きは複雑ですが、専門家に依頼すると無駄な時間を要しません。
○大抵の事案では、弁護士が介入することで債権者の圧力はほとんどなくなります。万が一そのような圧力があった場合にも、事態に応じて弁護士からアドバイスをいたします。
通常、債権者との交渉はすべて弁護士が行い、債権者とのやり取りの窓口は弁護士になりますので、直接、破産をする方に債権者から連絡がいくことはありませんので、精神的な負担が大幅に減ります。
○代表者個人が事業のために借入を行っていたり、会社の債務について連帯保証をしていることが多くあります。この場合には、会社だけでなく、代表者個人の債務も整理する必要がありますから、弁護士は両方の代理人となって、それぞれの手続を同時に進めていくことが可能です。